地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
10分後────。


俺は、また怒らせたようだ。


「杏?」

「……」

名前を呼んでも、一切俺を見ない。

これじゃ……数時間前と同じだ。


プーッと頬を膨らませて、拗ねた顔をしている。

手だけは繋いでいるが……。


原因は、さっきの水着の試着のこと。

“全く似合ってない”と言ったから、ショックを受けたようだった。


“「地味子にカワイイ水着なんて似合わないもんね!」”


服を着て、試着室から出て来た杏が最初に口にした言葉。

悲しむような、怒っているような……泣きそうな顔で睨み付けながら言われた。


……正直に似合うと言うべきだったか……?

いや、そうだよなぁ……褒めるべきだったのかもしれない。

実際、似合いすぎてたし。

水着のヒモを解きたい衝動に駆られたんだ。

その場で、周りの男どもに見せ付けるように抱きしめたかった。

まぁ……抱きしめたら、確実に押し倒すと思って、思い止まったんだけど。
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