地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ギューっと、ぬいぐるみを杏が抱きしめて数分経つが……。


「杏?こっちに来い」

「やだ。閻魔大王がいい……」


一度も離さない。

両手を広げてみるが、まったく効果なし。

杏ちゃんは、ぬいぐるみを抱きしめている。

かなりお気に召したようだ……。



……やっぱり買ったのは間違いだったか?

ぬいぐるみに、杏を取られたし。

イチャイチャできねーじゃん……。


ガクッと肩を落とした。


ため息をついて、元いたソファーへと戻ろうとした瞬間───。


「う〜ん……やっぱり陸って、閻魔大王にそっくりだよね?」

「は!?」

コイツは、突然何を言い出すんだよ。

ポカンとした顔で杏を見つめた。


「……本物がいる時は、本物の閻魔大王に抱き着いておこうかな」


小さくそう呟くと……ぬいぐるみを置いて、俺の方に手を伸ばして来た。
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