地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
そして、ようやく自宅に到着する。


「杏樹ちゃんの家って大きいね!」

「そ、そうかな……」

橘くんが、キラキラとした目で家を見上げていた。

あたしの家で大きいとか言ってたら、他のみんなの家を見たらどう思うんだろう?

特に、陸の家とか。

あそこは、本当に大きいもんねぇ~。

橘くんがどうなのかは知らないけど、あたしの周りにいるみんなは、坊ちゃんやお嬢様と言われるような家柄。

うちも、デカイなとは思ってたけどまさか陰陽師という家業の他に、会社を経営してるとは思ってもみなかったし。



鍵を開けて、石畳の庭園を抜け、玄関に向かう。

そのまま扉を開けた。

うちは、基本鍵なんてかけない。強盗とか入るかもしれないという心配は無用。

だって、じいちゃんの最強の結界が張ってあるんだもん。

悪意のある者は、一切この敷地内には入れない。


するとーーー。

ーータタタタタタタ……


「あーちゃん、おかえりなさい!」

「ただいま」

廊下を繭ちゃんが走ってきて、あたしの腕の中に飛び込んでくる。


「いい子にしてた?」

「うん。お昼寝もしたよ!」


彼女を抱き上げて、目線を合わせた。

問いかけると、ニコニコとしたカワイらしい笑顔で答えてくれる。

あーカワイイ。幸せだ。

「あーちゃん、おろちはどこ?」

「後ろにいるよ」

繭ちゃんが目をキョロキョロとして探すので、後ろを振り返った。

「あ~! おろち!」

キャッキャッと嬉しそうな声を上げて、彼に小さな手を精一杯伸ばす。

その彼とはーーー……。

「来いよ、繭」

「お願いしますね、会長」

八岐大蛇こと、高瀬蓮会長なのです。


さっきまで、怒っていたのに、繭ちゃんを見た瞬間ーーー。

その表情は、柔らかいものに戻った。


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