地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
あたしが大学に入って会長と零ちゃんと再会してから、繭ちゃんは、会長たちとも仲良くなったんだ。

霊力や見鬼が一切ない会長たちには、あたしが妖怪である彼女に術を施してあげないと見えない。

零ちゃんたちにだけ見えるように術をかけて、大学内でも会えるようにしてあげてるんだ。

だから、繭ちゃんは会長のいる法学部の方に遊びに行ったりもしている。

会長には飛鳥くんっていう5歳くらいの弟がいるから、面倒見はいいの。

だから、繭ちゃんも懐いちゃってる。


今では、会長のことを“八岐大蛇”から“おろち”と呼んでいるくらい。

カワイイ繭ちゃんには勝てないのか、怖い八岐大蛇も彼女が呼ぶことに関しては怒らないんだよね。


今、リビングにいても、会長の胡坐をかいた中にちょこんと背中を預けて座ってるんだ。

半日ぶりに会ったらしくて、たくさん繭ちゃんが会長に話しかけている。


「あのね、昨日からあーちゃんがごはんいっぱい作ってるんだよ!」

「そうか。楽しみだな」

「ハンバーグも食べたいって言ったら、作ってくれるって!」

「繭の好物だもんな」


その声に、優しい目をして耳を傾けている会長。

う~ん。将来、いいパパになると思う!

子煩悩そうだもん。



だけど。


「ね、君は杏樹ちゃんの妹?」


楽しそうなふたりの会話を邪魔する人がひとりいた。


……そう、橘くんです。

会長たちの前に座り込んで、にっこりと笑いかけている。

その問いかけに、繭ちゃんが彼を見つめた。


「……おろち……この人だぁれ?」


キュッと会長の服を握って、後ろを振り向いて聞く。


「……杏樹と同じ学部の人だ」

「あーちゃんの?」

「あぁ」


その答えに、彼女は、真正面から橘くんをまじまじと見つめ返した。

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