地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
少し大きめだったTシャツの裾から、胸元に上がってくる。

「り、陸ダメだって……!」

目だけで繭ちゃんの方を見て、うったえた。

彼女は、まだスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。


「キスしたい?したくない?」

妖艶な……同い年の男の子とは思えないような表情で、あたしを挑発してくる。

そ、それは……したいけどっ……今は−−−……。

「し、しないっ……んんっ!」

拒否の言葉を口にした途端、聞こえなかったとでも言うように……口づけられた。


「したくないんだ?」

「りっ……!」

隣に繭ちゃんが寝てるのに、そんなこと言わないでよ!

陸をキッと睨みつけた。

そんなヤツは、クククとあたしの反応を楽しげに見ている。


「今、下にはみんないるんだよ!?ご飯できたから呼びに行くって言ってきたのに、遅かったら怪しまれるじゃない!」

「怪しまれるって何を?」

「キスしてるって……」

そこまで言って気づいた。

あ……!

あたし、かなり恥ずかしいこと言ってませんか……?

ポポポと顔が赤くなっていくのがわかる。

陸に誘導された!ハメられた!

そう思うのは、ヤツがさも楽しそう笑っているから。

「へぇ〜?杏ちゃん、したいんだ?」

「ち、ちがうもん!」

「はいはい、今日は仕事ねーから。蓮たちが帰って、繭を寝かしつけた後にたっぷりとかわいがってやるよ」

「なななな……!!」

ニヤリと口角を上げる陸の色っぽさに、ノックアウトされ……「バカ陸」としか言えなかった。
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