地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
「支度できたのか?」
え?
後ろから、陸の声が聞こえた。
振り向くと、あたしの後ろに立っていて、隣にはじいちゃんもいる。
なんでこのふたりが?
「う、うん。でも、どこに行くの?」
「……内緒」
クスッと笑う陸は、行き先を教えてはくれない。
なぜじゃ!
「繭、行くぞ」
「りーくん!!」
リビングにいる繭ちゃんの方へ呼びかけた。
――パタパタ……
ニコニコと笑う彼女は、陸の元に駆け寄ってきて飛びつく。
そんな繭ちゃんを陸は、軽々と抱き上げた。
……ちょっとうらやましい。
抱っこいいなぁ……っじゃなくて!!
「ねぇ、ホントに……」
どこ行くの?
化粧もしなくていい。
陸の決めた服を着て。
繭ちゃんも連れて。
なにしに行くんだろう?
その時。
「繭ちゃん!忘れものよ!」
へ?
リビングの中からお母さんが出てくる。
その手に握られているのは、繭ちゃんが愛用している八岐大蛇のぬいぐるみ付きリュック。
「わぁ~ママありがとう~」
陸に抱っこされたまま、お母さんが彼女の方にリュックを背負わせた。
そして、あたしたち3人は、じいちゃん、両親に「杏樹、がんばりなさいね」と見送られながら、家を出た。