地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ぶつかった衝撃で、床にひっくり返りそうになる。

だけど---。


――グイッ!

「あっ……」

ぶつかった人が、あたしの手を引っ張ってくれて、何とか倒れずにすんだ。

下を向いたまま、目をパチパチとさせる。

すぐに、男物の靴が目に入ってきた。

あたしがぶつかった人は男性のようです。


「大丈夫?」

真上からかけられた声は、ジーンと体に心地よく痺れを与えた。

すごく低くて、落ち着いている声だ……ってそんなこと考えている場合じゃない!


「は、はい!」

パッと顔を上げて、ぶつかったその人を見上げる。

男性だとは分かっていたけど、結構身長が高い。

というか、このシュチュレーション……前にもなかったかな?


コテンと、首を横に傾けて思い出そうとした時、

「おい圭一(けいいち)、その女誰だよ?」

少し、いや不機嫌そうな声がした。

え? ほかにも誰かいるのかな?

その背の高い人の後ろをちょっと覗きこんだ。

すると。

「雷(らい)、そんな口のきき方はやめなさいって」

明らかに不機嫌そうな表情をした男の人と、その人をたしなめる男の人が見えた。


「何もない、ただぶつかった」

圭一と呼ばれた人が、雷と呼ばれた人に返す。


その言葉を聞いて、ハッと我に返った。

そうだよ! あたしこの人にぶつかっちゃったんだ!!

「す、すみません! おケガないですか?」

パッと彼から離れて、そう告げた。

「ない、大丈夫」

そう聞こえて、ホッとする。


だけど同時に、あたしの目の前には5人の男性がいるのだとわかった。

その5人とも、あたしを凝視している。

な、何か……あたしはしたんだろうか?

そう思って首を傾けた。
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