地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
自分の腕時計で時間を確認すると、10時37分。

もう30分は経っちゃっていた。

じいちゃんなら1時間くらい気絶させられるんだけど、あたしにはそこまでできない。

せいぜい、40分が限度。

だから、もう起きちゃっている可能性が高いんだよ!

あぁ~どうしよう!!

パニック状態のあたしを見て、メガネの彼は不思議そうな顔をする。


「フツーは、俺たちにサインくらい求めて来るんだけどね」

「はい?」

彼の言葉が理解できずに、首を傾げた。

サイン? なにそれ?

この人たち何かで有名な人?

わけもわからずに、ポカンと口を開けていると。

「エレベーターはあっちだよ。天井の案内板に沿って行けばいいから」

栗色のかわいい男の人が教えてくれる。

おお!親切だ!

「あ、ありがとうございます!」

――ペコッ

教えてくれた5人に、深く頭を下げてお礼を言った。

あたしは、顔に笑みが灯るのを抑えきれない。

だって、これでここから出られるし、嫌いなTVとかでなくて済むんだ!!

と、思っていた時だった。

――ブワッ……

――ビリビリッ……

指先に電気が走り、背中を一気に悪寒が駆け抜ける。


この建物の中に、多くの妖気を感じた。


ウソ? ここにいるの?

スッと顔を上げて、辺りを見渡す。

この時は、目の前にいる5人のことも、頭から飛んでいた。

近くにはいないようだけど、どこかにいるのは確か。

「なんだろ……」

姿の見えない妖気に、神経を研ぎ澄ませようとした瞬間。


――コツコツ……


「見つけたぞ、杏樹」


背後で、恐ろしいほどに低い声がした。
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