地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
いえいえ。

ここで振り向いてはいけません。

「俺たちを眠らせてまで、逃げたいか」

人間なのに、人間離れしたオーラを漂わせる人。

もちろんです!!

コックンと大きく、背後にいる人にもわかるように頷く。

でもですね? ちょっとちがうよ。


「あのね、眠らせたわけじゃなくて、気絶させたの!」


ピンッと右手の人差し指を立てて、背後にいる人に説明した。

だけど同時に、目の前にいた5人の男の人たちが「え?」という顔をする。

ですよね、普通、こんな地味子が人を気絶させられるなんて思いませんよね。

フムフムと自分で納得して腕組みをしながら頷いた。

すると。


「んなことは、どうでもいい。杏樹、閻魔大王がお待ちだ」


――ピクッ

ヤツの言葉に、体が一瞬反応して、指先が動いた。


「戻るぞ」

「ヤダ!」

――パッ……!

初めて振り向いて、背後にいた人を睨みつける。

冗談じゃない。

誰が戻るもんですか!


だけど……そこには……閻魔大王のお友達、八岐大蛇が降臨なさっていました。


内心……ヒィ!ですよ。

でも、睨むのはやめません。


「ワガママ言うな。もう決定してんだよ」

一段と怖さをアップした長身の八岐大蛇が、あたしを見下ろす。


「出るのが6人なら、あたしじゃなくたっていいじゃない! 相澤くんや、ありさちゃんだっているじゃん!!」


あまり騒いではいけないであろう通路で、あたしは思いっきり叫ぶように言った。

そうだよ。

あたしじゃなくたっていい。

こんな華やかなところが嫌いなあたしが、来たくもないって知っているでしょう?


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