地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
これじゃ、テレビを見た人たちがファンクラブの会員になるかもしれない。

噂だと……1000人を軽く超えているらしいのに。

ホント。陸は芸能人かって思っちゃうよ。

そんなことを考えていたら。


「あっ……えっと! そのっ……今回はそのペアだった子にも来てもらったんです。えっと……神崎さん?」


顔を真っ赤に染めたアナウンサーが、しどろもどろで原稿を読んだ。

どうやら、陸に見とれていたらしい。

ん? あれ?

今……あたしの名前呼ばれた?


一瞬、状況についていけなくてポカンとしていたら……。

――ツンツン


「杏樹。呼ばれてるよ」


隣にいた柚莉が、肘であたしを突っついてくる。

やっぱ呼ばれていたんだ。


「あ……はい」


イヤだけど、我慢しなきゃ。

陸のためでしょ!!

そう考えて、遠慮がちに小さく手を上げた。


その瞬間。


「キミが滝本くんとのペアだった子?」


司会者の男性が、あたしの顔をマジマジと見てきた。

うっ~……そんなに見ないでください。


「滝本くんとペア組んで大会はどうだった?」


え? いきなり質問ですか?


司会者の男性に、笑顔で問いかけられて戸惑う。

な、なんて返そう?


――チラッ


とっさに、あたしよりも前にいた陸の方を見る。


ヤツの目は、『適当に答えろ』と言っているように見えた。


そんな、適当ってなんて言えばいいのよ!

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