地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
「全員頭脳明晰で、それぞれ特技があって、容姿も抜群。これは、最強のQチームと言ってもいいくらいだよね!」
司会者が、出演者に向かってそう告げる。
「だよなぁ~」
「スゲ~」
タレントさんやお笑い芸人さんから賛同の声が上がった。
すると。
「じゃあ、質問!」
アイドルチームのひとつ、ジャンキーの方から、男性がひとり手を上げて、立ち上がる。
なんだろ?
「旭くん、なにかな?」
司会者の人が、彼の名前を呼んで、質問をするように促した。
「そこまで頭いいなら、将来何の仕事に就くんだ?」
彼は質問の答えを楽しみにしているのか、子供みたいなワクワクとした表情で問いかけてくる。
将来……か。
あたしは、さすがに『妖怪退治屋を継ぐ』とは、言えません。
てことは……神崎を継ぐって言ってもいいのかな?
そう考えていたら。
「滝本くんは、何の仕事を希望しているの?」
女性タレントさんのひとりが、陸に問いかけた。
どう答えるの?
陸は、すでに会社の社長だもん。
じーっとヤツを見つめていたら、一瞬だけあたしの方を見て笑う。
え? なんで?
そう思った瞬間。
「僕は……普通の会社員ですね」
陸が、少し微笑みを浮かべて返した。
か、会社員?
社長さんじゃなくて?
陸がなぜそう答えたのかがわからずに、首を横に傾げる。
そうしたら……。
――ボソッ
「プッ……。陸らしいな」
本当に小さな声で、マイクにも拾われないくらいの声で会長が呟いた。