地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー


「やっていいよ」


陸に向かって、許可の言葉を言った。


「縛」


小さく、独り言を呟くような大きさの声で陸が唱えた瞬間。


――ビシッ!!


山姥たちの体の自由が奪われ、その場で固まる。


ちょうど、あたしたちを取り囲んで……あと3メートルという距離で。


「「「「「「なにっ!?」」」」」」


怒りに満ちた奴らの表情に、驚愕という色が混じり始めた。


今だ!


「みんな逃げてっ!」


――パタパタッ

あたしは柚莉を。

西国くんは零ちゃんを。

会長はちーちゃんを連れて……山姥たちに囲まれた中から抜け出す。

みんなを山姥たちからなるべく離れた、スタジオの隅へ連れて行った。


現実についてこれていないjunkieのメンバーも、手を引いて、柚莉たちと同じところへ連れて行く。


奴らの中に残ったのは、陸ひとりのみ。


「杏樹っ! 滝本くんは!?」


Junkieメンバーを連れて来たあたしに向かって、わめくように言う。



「平気だよ、アイツに奴らは指一本触れられないから」

「でもっ! 滝本くんは術なんて修めてないでしょ……!」


それでも、心配だというように……陸を見る柚莉。


「もう動くから。大丈夫」


フフッと笑って、ポケットから黒い手甲を取り出した。


ゆっくりとみんながいる場所から反対方向へ向かって歩き、スタジオ内にあったセットの上に座って……奴らの様子を眺めた。

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