地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
1番早くあたしに到達した山姥が、鋭い爪を持つ手を真上に振り上げ、


「死ね―――!」


大きな叫び声とともに振り下ろされる。


バカね。


「付くも不肖、付かるるも不肖、一時の夢ぞかし」


呪符を指に挟み、山姥の額に押し当てた。


「ギャア!!」


山姥の体は固まり、悲鳴を上げる。


この状況を見た他の山姥たちの行動が停止した。


あれま、ビビった?


さらに呪文を唱える。


「生は難の池水つもりて淵となる。鬼神に横道なし。人間に疑いなし。教化に付かざるに依りて時を切ってすゆるなり」


あたしの口から紡ぎだされる呪文に、呪符を張られた山姥は苦痛に顔を歪めた。


「はぁ~なぁ~せぇぇぇえ―――!」


間近で、叫ばれるとさすがにうるさい。


もういいや。

もっと苦しめて調伏しようと思ったけど、呪文を完成させることにした。


「下のふたへも推してする!」


呪文が完成し、呪符からまばゆい光が放たれ……とどめと言わんばかりに告げる。


「まずはアンタから地獄に行きな。滅っ―――――!」


その瞬間。


「あああぁぁぁぁぁああ―――――!」


断末魔が響く中、まずはひとり山姥が消えた。



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