地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー


「はい、終わりです。さすがに衣装は直せないけど……」


ちーちゃんの手を離して、次のメンバーの前に立つ。


「杏樹って、こんなすごいことも出来るの?」


初めて術を施すところを見た零ちゃんが呟いた。


「……杏の得意な術だ」


一言、そう返す陸。



Blossomのメンバーを全員治した後、junkieのメンバーを治した。

全員の治療が終わった時、ちょうどスタジオ内にスタッフさんが入ってきて……今回の騒動は終わりを告げた。





番組の収録は中止になり、また呼ばれるかもという話をして解散。

いや、もう来たくないんだけど。


心の中でそんなことを思いながら、みんなでテレビ局を出ようとする。


「あ~いろんなことあって、お腹空いちゃった! ご飯食べて帰らない?」


柚莉がそう提案すると、


「さんせ~い!」


零ちゃんが元気よく手を上げる。

西国くんや会長もその意見に賛成した。


「ね、杏樹も来るよね?」


零ちゃんから笑顔でそう問い掛けられる。

う……ちょっと、ムリかも。

実は……さっきの治癒の術を使ったことで、かなり体がキツイ。


体力と、気力。精神的にもかなり疲れる術だから……さすがに11人分は、力使い過ぎたね。

でも、ここで断ったら……みんなが心配する。


「あ、うん。い……」


『行くよ』と返事をするつもりだったのに。


――パシッ


「わりィ、俺パス! 仕事あるんだ。杏も手伝わせるから連れてくな?」

「えっ……ちょっと陸!」


いきなり腕を掴まれて、ヤツに引き寄せられた。


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