地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
*第七章*

†ラブレター

***************


白熱灯のスタンドだけが部屋の中を照らす。

薄暗い部屋の中、パソコンのキーボードを打つ男がいた。


――ゴオオオオ……


冷房に設定しているエアコンの作動音が聞こえる。


――カタカタカタ


キーボードの横には、1枚の写真があった。

その写真に写っていたのは、黒髪の女性。

名前を神崎杏樹という。


「杏樹、君にラブレターを贈るよ」


男は、女性の名前を愛おしそうに呼ぶと、写真を眺めた。



パソコンの前から立ち上がり、今までいた部屋を出る。

わずかな明かりを頼りに、狭い廊下を歩き、ひとつの扉の前で足を止めた。


――ガチャ……


扉を開けて、真っ暗な部屋の中に入る。


――パチッ


電気をつけると、視界が開けた。


だが、部屋の中は普通の人間では悲鳴を上げるようなものだ。

ある片隅には、大きな本棚があり……毒殺についての本が並べられている。

また、あるところには……配線だらけの機器が置かれていた。

男は、迷わずそこへ行き、ヘッドホンをつけると、機器の電源を入れる。


「今日は何しているのかな?」


男が耳を澄ますと。


――ガガガッ……


雑音が短かく響いた後、聞こえたのは。


『繭ちゃん、ご飯よ。降りていらっしゃいな』


落ち着いた女性の優しい声。


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