地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
『うん。ママ、あーちゃんは帰って来ないの?』
繭と呼ばれた女の子が、声をかけてきた女性に問いかける。
『杏樹? 今夜は、バイトなのよ。繭ちゃんが寝るころに帰って来るわ』
『あーちゃん遅いんだ……』
『そうよ、だからご飯食べましょう?』
『うん』
そう言うと、女の子のなのか……。
――ピョコピョコ
かわいらしい足音を立てると、出て行った。
だが、女性は残っていたようで。
『な~んか、おかしい気がするのよね。杏樹の部屋って……』
そうポツリと呟く。
男はそれを聞いていて、ドキッとした。
自分の行為がバレているのではないかと。
そう……神崎杏樹の部屋を盗聴していることを―――。
しかし、それは男の杞憂に終わる。
『大丈夫よね、うちには渉だっているし。お義父さんもいるんだから』
自分に言い聞かせるように呟くと、部屋を出て行った。
「はぁ……」
男は思わずため息をつく。
そして、機器の電源を落とすと、部屋の片隅にあるモノを手に取った。
藁(わら)で作られた……人形だった。
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