地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー


「楽しいっていうか、まぁ……責任はあるけど、やりがいはあるな」

「そっか……」

「なんでそんなこと聞く?」


わずかに目を開けた陸。


う~ん、金曜日の話、しちゃおっか。


「あのね、金曜日のバイトでのことなんだけど」

「あぁ」


髪を撫でて、陸の顔を見下ろした。


「えっとね、どこの部署かは知らないんだけど……陸の会社に小田正宗さんっていう部長さんいるでしょ?」

「は? 小田部長? 経理部だ。あの人がどうした?」


どうしてあたしが、小田さんを知っているのか不思議そうな表情。


「小田さんね、うちの店の常連さんなの」

「小田部長が?」


大企業である滝本の部長クラスって言えば、相当の収入があるだろう。

なのに、庶民的な居酒屋の常連だってことが、陸には驚きだったみたい。



「何度か会う度に話すようになったんだ。それで、金曜日に小田さんが部下の人たちを連れて来たの。ちょうど、あたしが料理を運んで、会話に混ぜてもらったんだけど」

「へぇ~それで?」

「会社の社長さんの話になって。皆さん、陸のことすっごくいい人だって言ってたの」

「いい人?」

「うん。会社と社員さんのことちゃんと考えて、自分たちにもよくしてくれるって。自慢の上司って言ってた」


ニコニコしながら言うと、プイッとヤツは顔を背ける。


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