地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
あ、照れたね。


「小田さんたちは、あたしたちのことを知らないから……社員さんたちの生の声を聞けてうれしかったの。でも、陸の努力を見て認めてくれているから、もっとうれしかった」



そう伝えると、陸はもっと違う方向を向こうとした。


顔が、若干赤いのがバレバレなんだけど。

かわいいな、こういうとこ。


「よかったね。あたしね、仕事してる陸好きだよ。かっこいいもん! 誇りを持って、一生懸命で責任感あるし。何より社員みんなのこと大切にしてるから。こんな上司がいたら、安心するよ」



頭をなれながら最後まで言うと、陸はパッと起き上がる。


どうした?


不思議で、顔を傾けた瞬間。


――ポスッ


大きくて、あったかい陸の胸に抱き寄せられた。


そして優しく抱きしめられる。


「杏……」

「うん?」

「ありがと。そんな風に思ってくれて」

「ほえ? 思ったことを言っただけだよ?」


「それでもうれしい。その言葉で、これまで頑張ってきてよかったって思える。仕事で構ってやれねぇし、寂しい思いさせてるから……」


そう言うと、さらにあたしを抱きしめた。


あたしも陸の背中に腕をまわして抱き着く。


やった。してほしかったこと叶っちゃった!


甘めの香水の香りが心地よくって、さらにくっついた。



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