地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
それから、もうちょっとだけ休憩をした陸は、また仕事に取り掛かる。

今度は、パソコンじゃなくて、書類のハンコ押しみたい。

パソコンデスク横の机にむかっていた。

陸がぜ~んぶ、許可を出さないといけないから、大変だよね。


そうしていると、時刻は4時。

バイト行かなきゃ。


「もう行くね?」


プリントとにらめっこしてるヤツにそう声をかけると、あたしの方を向く。


「あぁ。じゃあな」


陸にフッと笑いかけられて、微笑み返し、部屋を後にした。





「あ~疲れた……」

夜中に近い時間帯のうす暗い道をひとり歩く。

ただ今、バイトが終わっての帰宅途中です。

普通の女の子だったら、こんな道怖がるんだろね。

だけどさ、あたし、陰陽師だもん。

まったく怖くないし……それに、ひとりじゃない。


「杏姉! 今帰りか?」


ノッシノシと、ゆっくりとした足取りで、あたしに足元に近づいてくるのは、イモリの妖怪。

全長……1メートルくらいの大きさかな。

本物のは虫類なら、大嫌いだけど、妖怪なら大丈夫。


「うん、さっきバイト終わったの」


その場に止まることなく、奴と会話しながら歩く。

ここら辺に住みついている雑鬼らは、幼なじみの柚莉よりも前から知り合い。

もう長年の友達なんだよねぇ~。


「大学、もうすぐ夏休みだろ?」

「うん」

「夏休み前の試験、単位落とすなよ?」

「わかってるって」


もし、周りに誰かいて、話を聞いているだけなら、人間同士にしか聞こえないようなものだけど。


あたしの会話の相手は、雑鬼。

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