地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
いや、今はそれより……。


「会長……剣道の有段者だよね? どうして……」


この前のクイズ番組で、プロフィールの中に入っていた項目。


武道を修めた会長が、そう簡単にやられたの?



「後ろから頭を金属バットで殴られたみたい……」


零ちゃんが事件の起こった時のことを説明してくれた。


警察の人にでも聞いたのかな……。



繭ちゃんの手を強く握りしめる。



病院内の通路に、カチカチと時計の針が動く音が響く。


その音があたし自身の心臓の音と同調した。


まわりの音が耳に入らなくて、時計の音だけが聞こえる。


1分の時間が、まるで1時間に思える……。



怖い。会長を失うことが怖い。



「あーちゃん、おろち大丈夫だよね?」



繭ちゃんのすがるような問いかけにも、答えられない。

焦点の合わない目で、ボーっと宙を見つめた。





しばらくして。



「杏樹ちゃん……」



会長によく似た顔立ちの男性から声をかけられる。


その人は……会長のお父様、高瀬春さんだった。



高3の夏休みの時に、会長のお家の泊まらせてもらったことがある。


その時に、初めてお会いしたんだ。


かれこれ……1年ぶりの再会。


久々に会ったのが、こんな場所なんて……。



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