地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
会長のお父様は、憔悴しきっていた。

ムリもない。

大事な息子が、何者かに襲われて、死の淵にいるんだから。


「おじさま、蓮は?」


ありさちゃんを抱きしめたままの零ちゃんが問いかける。


「まだ安心はできない。医者からも、覚悟してくれって言われたんだ……」


お父様の言葉に、その場にいた全員が息を呑んだ。

会長、なんにも悪いことしてないのに。

どうしてこういう目に遭ったの?


もう、助けられる手段はないの……?


自分の手の平を見つめる。


――ドクンッ……

心臓の鼓動が大きくなった。





―――ある。


あったよ。瀕死の会長を助けられる方法。

無傷とまではいかないと思うけど、今の状態よりずっと良くなることは確かだ。


視線を自分の手から、近くに立っている陸へと移す。


1週間前のことが頭をよぎった。


クイズ番組のスタジオで妖怪をやりあって、けが人を治し、終わると同時に気を失った。

その時は陸がホテルを取って休ませてくれた。


でも、その時、約束したんだ。


『お前の治癒の術は、滅多なことがなければ使うな』


あたしの力は、使わないと。


陸と指切りしたんだ。


『もう見たくねえんだよ。お前がぶっ倒れるところなんか……意識が戻るまでお前を待つこっちの身にもなってみろ』


あの言葉が忘れられない。

あの時の表情も。

怒ったような、悲しんでいるような、複雑なものだった。

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