地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
陸の悲しそうな顔は見たくない。
あたしが嫌いなものだから。
でも……これは、必要な時と思うんだ。
だから。
「陸、ちょっと話がある」
繭ちゃんを柚莉に預けて、ヤツをみんなのいるところから呼び出した。
うす暗い外来。
深夜だから当然誰もいない。
「杏?」
陸を病院の正面玄関のホールまで連れてくる。
ヤツは、あたしが何をしたいのかわからない様子で急かしてきた。
早く会長のところに戻りたいよね。
「ここまで来れば、零ちゃんたちに会話を聞かれることはないかな……」
ホールの真ん中で足を止めた。
「なんだよ話って……」
後ろをついてきていた陸が問いかけてくる。
ヤツに背中を向けたまま、一言告げた。
「ごめん。あたし、約束破る」
「は? 約束って何の……」
「あたしなら、医学は無理でも会長を治せると思うの」
「は……ッ!?」
陸のまとう雰囲気が険しさを帯びる。
あたしの言いたいことがわかったみたい。
「もちろん、すべてはムリだけど。絶対に今よりはい……」
「ダメだ」
あたしの続きの言葉をかき消すように、陸が低い声音で言った。
振り返って、ヤツの目を見る。
うす暗くてもわかるくらいに、怒ってた……。
「バカが。約束しただろ!」
ホール中に響くくらいの大声で怒鳴られた。
「今は必要な時だよ」
いつもなら、こんな閻魔大王になった陸は怖くて仕方がないのに、怖くなかった。
あたしが嫌いなものだから。
でも……これは、必要な時と思うんだ。
だから。
「陸、ちょっと話がある」
繭ちゃんを柚莉に預けて、ヤツをみんなのいるところから呼び出した。
うす暗い外来。
深夜だから当然誰もいない。
「杏?」
陸を病院の正面玄関のホールまで連れてくる。
ヤツは、あたしが何をしたいのかわからない様子で急かしてきた。
早く会長のところに戻りたいよね。
「ここまで来れば、零ちゃんたちに会話を聞かれることはないかな……」
ホールの真ん中で足を止めた。
「なんだよ話って……」
後ろをついてきていた陸が問いかけてくる。
ヤツに背中を向けたまま、一言告げた。
「ごめん。あたし、約束破る」
「は? 約束って何の……」
「あたしなら、医学は無理でも会長を治せると思うの」
「は……ッ!?」
陸のまとう雰囲気が険しさを帯びる。
あたしの言いたいことがわかったみたい。
「もちろん、すべてはムリだけど。絶対に今よりはい……」
「ダメだ」
あたしの続きの言葉をかき消すように、陸が低い声音で言った。
振り返って、ヤツの目を見る。
うす暗くてもわかるくらいに、怒ってた……。
「バカが。約束しただろ!」
ホール中に響くくらいの大声で怒鳴られた。
「今は必要な時だよ」
いつもなら、こんな閻魔大王になった陸は怖くて仕方がないのに、怖くなかった。