地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
――陸side――

夏の太陽が目を覚ます時間だというのに。

俺たちは、今にも消えそうな命の灯りしか見えない。

目の前が真っ暗になりそうだ。






「いやあぁぁぁあああ」

「悠ヤダッ……」


松沢と朝比奈が、変わり果てた自分の彼氏を見て、泣き崩れる。


今俺たちがいるのは、救急の処置室。

さっき運ばれてきたふたり組は、悠と雅人で間違いなかった。

杏とふたりで、アイツらの状態を見た途端に声が出なくなってしまった。



全身が血だらけで、透明な緑色の酸素マスクをつけられたふたり。

着てきた服も、所どころ破けていて……。

目を向けられなかった。


処置室内では、看護師や医者の声が飛び交っている。

わずかに聞こえてくる電子機械音の種類も、多い。



俺の友達、3人が……一気に襲われた。


それも、全員……金属バットなどの棒で、散々殴られている。


蓮が襲われたことだけでも、精神的に参ったというのに。


悠や雅人たちまでとなると、気が遠くなりそうだ。



一度に色々とありすぎて、頭がまわらない。



処置室の前にあるベンチに腰を下ろす。



どうして、アイツらが襲われんだよ!



――ゴンッ

握り締めた拳で、壁を殴った。



こんな痛み、アイツらとは比べ物にならない。

相当痛かったはずだ。


想像してみろ。



金属バットだぞ?

スポーツに使うんじゃなくて、殺人に使うって……どういうことだよ。



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