地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ハッとした時には、もう遅くて。


「えっと……胸とお腹です」


突然聞かれてポカンとしたままの看護師が、素直に答える。


「杏っ!!」



思わず名前を叫んだ。



どうかやめてくれっ!

お前まで失いたくはない。


だが、彼女は……一度だけ振り返ると、言い放った。




「お説教は、あとでいくらでも聞くから」



フッと笑みを作って……処置室内に入って行く。



「あっ! だ、ダメですよ!! 何するっ……」




勝手に入った杏を、家族、看護師は不思議で見ていることしかできなかった。


透明なガラス越しに見る俺たち。


彼女が悠の横に立つ。




「まったく。柚莉泣かせないでよ……」




フーッと大きく息を吐いたかと思った瞬間。



悠の腹に左手を置いて、右手は人差し指と中指を立てて、印を作る。









「神崎の名において、我が霊力を駆使する。高瀬蓮。西国雅人。相澤悠。この者たちを助けよ、代償は我が身とする―――!」






そうして、一気に叫ぶように告げた――――――。






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