地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
そして、ふと窓の外を見ると、もう昼になったからか……太陽の日差しが痛い。

自分の腕時計を見ると、午後12時を過ぎていた。


「もう昼ですね。交代で食事しましょうか?」


そう提案すると、お袋さんもうなずく。


俺たちは、病院の最上階にあるレストランで、ほぼ毎日昼飯を食っていた。

杏が目を覚ます可能性だってあるので、交代で摂る。


「昨日は私が先だったから、陸くん、先に行って食べて来て?」


お袋さんに促され、「では、先に……」と言って、立ち上がろうとした。




ずっと繋いでいた杏の手を離し、ベッドに置こうとした瞬間。



――キュッ



「は?」


一瞬、コイツが……俺の指を握ってきたような……。



まさかな?




顔を見ても、変わったことはない。



気のせいだと考えて、もう一度、離そうとした時。


















「……ば……あちゃ……ん……」




小さかったが、ちゃんと杏の声が聞こえた。


「杏!?」


寝ている杏の顔を覗きこみ、手を握り直す。


「杏樹!?」

お袋さんにも聞こえたのか、驚きと喜びの混じった表情で名前を呼んだ。


――ギュッ……



さっきは、気のせいだと思ったが、やはり杏が握り返してくる。


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