地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
杏は緑のマスクをしているので、くぐもった声しか聞こえないが、何度も「ばあちゃん」と繰り返した。
――ユサッユサッ
杏の肩を掴んで、揺さぶる。
本当に起きたのか?
だったら目を開けてほしい!
「杏!」
病室中に響くくらいの声で、名前を呼んだ。
すると……。
「……ばあ……ちゃん……」
途切れ途切れではあるが、あの柔らかくて、優しい声がする。
同時に、少しだけ瞼が震えた。
長いまつ毛が生えた目が、ゆっくりと開かれる。
大きな黒目が、俺を捉えた。
「あ……ん……?」
目の前のことが信じられなくて、思わず夢じゃないと確かめるために、杏の顔に手を伸ばす。
まだ熱があるからか、頬は熱い。
でも、触れられる肌は夢じゃないと確信した。
「杏樹!」
お袋さんが、慌ててベッドの近くにあったナースコールを押す。
「はい、神崎さんどうされました?」
無線機のような機械からは、落ち着いた看護師の声が聞こえてきた。
「あのっ! 娘が目を覚ましたんですっ!!」
「本当ですか! すぐに行きます」
そんな会話を聞きつつ、杏に問いかける。
「杏? 俺がわかるか?」
いつかのように、見えないとか言われたくないから。
忘れたとか、「誰ですか?」とか、聞きたくないねーし……。
ドクドクと、心臓が暴れながら、答えを待つと。
――ギュウ……!
「……り~く……」
俺の手を握り返しながら……少しだけ微笑んで、名前を呼んでくれた。
その一言に、深く息を吐いて……心底ホッとしたんだ――――。
――ユサッユサッ
杏の肩を掴んで、揺さぶる。
本当に起きたのか?
だったら目を開けてほしい!
「杏!」
病室中に響くくらいの声で、名前を呼んだ。
すると……。
「……ばあ……ちゃん……」
途切れ途切れではあるが、あの柔らかくて、優しい声がする。
同時に、少しだけ瞼が震えた。
長いまつ毛が生えた目が、ゆっくりと開かれる。
大きな黒目が、俺を捉えた。
「あ……ん……?」
目の前のことが信じられなくて、思わず夢じゃないと確かめるために、杏の顔に手を伸ばす。
まだ熱があるからか、頬は熱い。
でも、触れられる肌は夢じゃないと確信した。
「杏樹!」
お袋さんが、慌ててベッドの近くにあったナースコールを押す。
「はい、神崎さんどうされました?」
無線機のような機械からは、落ち着いた看護師の声が聞こえてきた。
「あのっ! 娘が目を覚ましたんですっ!!」
「本当ですか! すぐに行きます」
そんな会話を聞きつつ、杏に問いかける。
「杏? 俺がわかるか?」
いつかのように、見えないとか言われたくないから。
忘れたとか、「誰ですか?」とか、聞きたくないねーし……。
ドクドクと、心臓が暴れながら、答えを待つと。
――ギュウ……!
「……り~く……」
俺の手を握り返しながら……少しだけ微笑んで、名前を呼んでくれた。
その一言に、深く息を吐いて……心底ホッとしたんだ――――。