地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
「もう大丈夫でしょう。熱と脱水はありますが、意識もしっかりしていますし……安静にしていれば、問題はありません」
杏の主治医が、ベッドに起き上がった彼女を見て微笑みながら、そう話す。
杏の意識が戻ってから、15分。
医者たちのチャックが終わり……今、結果を聞いていた。
「ありがとうございます!」
お袋さんは、医者と看護師たちに頭を下げる。
俺もそれにならった。
「ムリしたらダメだよ?」
「はい」
医者は杏にそう言うと、病室を出て行く。
――ガチャン
病室入口の扉が閉まると、俺はベッドの布団を引っ張り上げて、杏の口元まで覆った。
ずっと寝ていたので、体がまだ思うようには動かないようだが、そのうち前のように動けるようになるだろ。
「ありがとう」
小さな声で礼を言う杏の頭をクシャクシャと撫でる。
すると、布団の中から杏が手を伸ばしてきて、俺の服を引っ張った。
――ツンツン
「ん? どした?」
まだあまり大きな声は出せないらしく、俺が顔を近づける。
すると。
「ね、会長たちは大丈夫?」
耳元で、ボソボソと心配そうに問いかけてきた。
「あぁ。元気にリハビリしてるよ」
そう言った瞬間。
――ガラッ
「「「杏樹っ!」」」
一気に、病室へ訪問者が現れる。