地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
そのメンバーを見て……。


「ほら、言ったろ?」


杏の頭を撫でた。


入って来たのは、松沢、朝比奈、蓮の3人。

入るなり、杏がいるベッドに駆け寄ってきた。

まぁ、蓮は松葉杖だから……ちょっと遅れるけど。


「杏樹~!」


――ガバッ

松沢が真っ先に抱きつく。


「柚莉っ……苦しいっ……」


杏は小さな声で反抗するが、その願いも今は聞き入れてもらえない。

目に涙を浮かべている松沢に、俺も手は出せない。

コイツだって、杏のことを心底心配していたんだからな……。


その後、朝比奈も杏を抱きしめた。


さすがに、蓮はしなかったけど。


つーか、いくら蓮でも……抱きしめたら、俺、張り倒すと思う……。


「お前が無事でよかった……」


そう微笑みながら言う蓮に、杏もニコッと笑った。

それからは、やはりまだ安静にさせようということで、松沢たちは帰宅する。

蓮も自分の病室に戻った。


杏のお袋さんも、一時帰宅すると言って出て行く。


騒がしかった病室も、先ほどの静かさを取り戻した。


「嵐が去ったな?」

「うん」


ベッドに腰掛けていると、杏が寄りかかって来る。



コイツが起きてから、やっとふたりっきりになり……本音は、一度くらい抱きしめたい。


でも、脱水が続く杏の左手には、いまだに点滴が繋がれていた。


あんまり動かせねーよなぁ……安静にしなきゃいけねえし。



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