地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ところが。
その直後に。
杏が……驚くべき一言は発した。
「じいちゃん」
「なんじゃ?」
じいちゃんの表情は、かわいい孫が無事に眠りから覚めたので、何でも願いは聞いてやろうという感じで。
杏は、俺の腕の中にいたまま、彼らに話しかける。
「あのね、退院したら……行きたいところがあるの」
上手く大きな声が出せないため、小声ではあるが、一生懸命に話す杏。
「言ってみなさい。どこじゃ?」
じいちゃんが優しい声で言うと、杏は不意に俺を見上げた。
「ん?」
なんだ?というような顔をしてみるが、杏はじいちゃんに視線を戻す。
何だったんだよ。
そう思ったのもつかの間。
「ばあちゃんのところに行きたい」
じいちゃんの目を見つめたまま、はっきりとそう言った。
「は? なんじゃ? ばあちゃんのところにか?」
じいちゃんが問いかけると、杏はコクンと頷く。
「どうしてだ?」
親父さんが聞くと、俺の服を握る手に少し力が入った。
「ばあちゃんに……力を借りたい。大切な人みんなを守れるように」
そうやって、もう『決めたから』というような顔で、言ったんだ―――……。