地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー


「いいに決まってるじゃない。あなたは私のかわいい孫なんだから」


そう返すと、杏樹は元気よく「うんっ!」と頷いたの。


「私は、いつまでも京都で待ってるからね」


その一言を告げて、私は翠のいるこの家に来た。



えっと、柚莉ちゃんだったかしら。

杏樹の幼なじみで、親友の女の子は。


あの子と友達になったと電話で聞いた時は、ボロボロと涙が出るほどうれしかった。




高校生になり、杏樹が仕事を始めたと聞いた時には、喜びもあったけれど、心配だった。



だって、あの子が初孫だったのよ?


それに、この家業は、いつ失命してもおかしくない。


生と死が、いつもある仕事だから……杏樹がケガをしないようにただ祈ってた。




高校生では、色々とあったらしくって……京都に来てくれることはなかった。



それでも、今回、私を訪ねてきてくれたことが、うれしい。


はじめて杏樹が頼ってくれたから。



「孫に会えたのと、頼ってくれたのと……うれしいことが重なったわね」


ずっと気にかけていたということを話し、微笑んでみせる。


「ありがとう。ばあちゃんに会えて、うれしかったよ」


そういう杏樹も、ニッコリと笑った。




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