地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
*第八章*
†ありえないカップル
「杏、機嫌直せって」
「フンッ!」
隣にいる陸の言葉を無視して、大学の構内をスタスタと歩く。
「別にいいだろ。あれくらい……」
「どこがよっ!?」
呑気な声を聞いて、怒りが爆発した。
背の高いヤツをギロリと睨みつける。
あたしがこんなに怒っているのは、理由がある。
それは、数時間前にさかのぼるんだけど……。
今日は、京都から帰ってきた翌日。
昨日の夜に自宅に着き、陸に会ったのは今日の大学での講義。
あたしも、1週間ぶりに会えるから、うれしかったのに。
ルンルンで、大学に着いたというのに。
このバカ野郎。
教室で会うなり、キスしてきた。
チュッって感じで、一瞬だったけど……まわりに見られて大騒ぎ。
特に、陸を好きな女の子たちには睨まれ、指をさされ……散々な気持ちで講義を受けたんだ。
もう~ありえないんですけど!!
「キスくらい慣れろや」
「そういう問題じゃない!!」
シャーっと猫のように威嚇してみるが、陸に反省の色はない。
なんでこうも、自分勝手で、自己中なの!?
はぁ~と大きくため息をついた。
「ほら、蓮たちのとこに行くんだろ?」
あたしがいくら怒っても、ケロッとしているヤツは、手を握って引っ張る。
怒りをやり過ごして、病院へと向かった。