地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
「な~んだ。そう言うことだったのね」
クッキーを口に入れながら、零ちゃんがケラケラと笑う。
「はい……」
そう言って、ソファーの上に、小さく縮こまる茅那ちゃん。
申し訳なさそうに、会長に向かって頭を下げた。
「もういいって言ってんだろ」
ギロッと彼女を睨み、プイッと顔を背ける。
今は、ありさちゃんが持ってきたクッキーと、あたしのお土産、八つ橋で、病室内でお茶中。
会長の病室は、個室で、広々としている。
ソファーやテーブルなんかもあって、談話ができる空間もあったんだ。
そこにお菓子を並べて、コーヒーを入れ、みんなでおしゃべりしているというわけなんです。
みんなが勘違いした、会長と茅那ちゃんの関係は、こうだ。
以前、彼女は。
人気の出た頃に、ファンの人から夜道で襲われそうになったのだという。
そこで、助けてくれたのが会長で。
茅那ちゃんは、本当に感謝したんだと。
それで、ふたりは何も接点とかなかったらしいんだ。
女嫌いの会長が、女の子を助けたのも、襲われていたからであって……特に何の感情もなく。
でも、先日。
テレビ番組の収録で、再会。
茅那ちゃんは、すぐに会長があの時助けてくれた人だと気づいたらしい。
前々から、護身術を身につけたかったらしい彼女は、会長に武道を教えてくれるように頼んだ。
会長のプロフィールは、剣道の有段者って言われたからね。
会長も渋々だったけど、引き受けて、剣道の稽古を茅那ちゃんの仕事が終わってからやっていたそうな。