地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ホッと息をついた瞬間。


「杏……?」


陸のあたしを呼ぶ声が聞こえて、ベッドに駆け寄った。


「陸!?」


寝ているヤツの体を揺さぶる。


「杏か……」


ゆっくりと目を開けて、あたしを目に映した。

だけど。


「いってぇ……」


陸は頭を押さえて、顔をしかめる。


また……頭痛?

少しでも楽になるように、ヤツの頭を撫でた。


陸の顔は蒼白で、疲れが見える。


ねぇ、なんで?

なんで、呪詛なんてかけられてるの?

守護の呪を身に着けているのに!



聞きたいことはいっぱいあるけど、弱っている陸に言葉が出ない。

陰陽師としての冷静な判断も、何もかもできなかった。


どうすればいいの?

じいちゃん……!


泣きたくなって、目に涙が溜まってくる。


その時。


「杏、どうした……?」


目を細めた陸が、あたしの顔に手を伸ばした。

――ギシッ

そして、陸は肘に力を入れて、起き上がる。

我慢していたのに、どうしても止まらなかった涙は、ボロボロとあたしの頬を伝って……。


「陸っ……!」


思わず、抱きついてしまった。

近くで聞けば聞くほど、ヤツの呼吸は苦しそうで。

あたしを抱きとめるほどの体力はないってわかる。


でも、抱き着かずにはいられなかった。

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