地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
――陸side――

俺の状態を見て、ワンワン泣き、抱き着いてきたかと思えば。

突然泣き止んで、部屋を飛び出していった杏。


どうしたんだ?


「すぐ戻るから」


その言葉通り、杏は……ものの30分で俺の部屋に戻ってきた。


両手にたくさんの何かを抱えて。



「なにすんだ?」


ベッドに起き上がったまま問うと、杏は荷物を広げながら答える。


霊力の強い杏がいるせいか、さっきまでの苦痛が少しだけ和らいだ。


「撫で物」


は……?

答えてくれたが、まったく意味がわからない。


「なんだそれ」

「あたしたち陰陽師の術。陸にかけられている呪詛を、別のモノに移す」


そう言って、俺の傍に来た杏の手には、墨を含ませた筆と、真っ白い人型の形をした紙があった。



「ここに、名前、生年月日、年齢と性別を書いて」


筆を紙を差し出され、とにかく受け取る。


「これに書くのか?」

「うん」


頷く杏の顔が真剣だったので、さっそく書いてみた。


滝本陸、11月16日生まれ、18歳、男、と。


書き終わると、杏が俺から筆を取る。


「一番、体の中でツライ個所はどこ?」

「は? 頭だけど……」


何が何だかわからないまま、素直に答えた。


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