地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
「なにしたんだ?」
「ん~穢れを祓ったの~もう大丈夫だよ~」
間延びした呑気な声で言い、俺に抱きつく杏。
どうやら、仕事終了らしい。
さっきまでの凛とした感じはなく、普段の天然娘に戻った。
首に腕をまわして、顔を寄せる。
「ねぇ、いつから頭痛あった?」
「お前が京都に発ってからだな……」
返すと、杏の体がピクッと動いた。
ん?
「……陸さ、誰かに呪詛かけられたんだよ。あたしがいなかった1週間の間に」
「そうなのか……?」
「たぶんね、藁人形とか使った呪詛だと思うの。それで、五寸釘を頭だけに打ち込んでるはず」
「俺、かなり恨まれてねーか?」
ボソボソと小さな声での会話。
杏は俺の体調が少し戻ったというのに、元気がない。
「恨まれてるけど、頭を打ちこまれてよかった。胸なら、心臓麻痺とか一発で死んでたよ」
「え……」
お前、結構サラッと言ったな。
頭じゃなく、胸なら死んでただと?
それに、恨まれているって……。
衝撃の一言に、言葉が出ない。
すると。
「ごめんね……ごめんなさい」
突如、杏が謝った。
「は? なんで?」
「あたしが、ネックレス外させたから……京都に行くなんて言ったから……こんな呪詛なんて受けてしまって……」
ギュッと、抱きついてくる力が強まる。