地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー


「あら、杏樹。出かけるの?」


階段を下りていたら、お母さんと会う。

会社から、さっき帰って来たようだ。

両親には、昨日のうちに陸のことも話してある。

お母さんも、呪詛のことは怒ってた。

『陸くんになんてことするのよ!』とか言ってったっけ?


「うん、呪詛に使われた藁人形、見つけようと思って……」


フツーの家庭なら、こんな時間から外に出ることは許されないと思うけど……。

あたしの家は、陰陽師だから、仕事は夜に行うことが多い。

だから、夜中に家を出て行っても咎められることはないんだよね。



「そう、気を付けてね」

「は~い」


そう言って、スニーカーを履き、玄関を出た。





その晩、朝方まで近くの神社をまわったのに……藁人形は見つからなくて。


「絶対に見つけるんだから」


そう心に決めて、家に戻った。






だけど……その後。

3日間、見つけられなかった。




4日目の朝。

大学の教室の隅の席に、ふたりで座り、ボソボソと話す。


「気にすんな。お前の体の方が心配だよ」


まだ見つけられないことを陸に言うと、そう返された。


「でも~……早く見つけないと、体に負担かかるでしょう?」


机に両腕を乗せて顔を伏せて、横を見ながら言う。


「大丈夫だ、バーカ」


クシャクシャと笑顔の陸に、頭を撫でられた。

その笑顔に、何だかホッとする。

まだ頑張んなきゃ。


よしっ!と、心の中で気合を入れていると。


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