地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
――コンコン

大きな扉をノックする。


「はい、どうぞ」


陸の落ち着いた声が聞こえて、扉を開けた。


「お邪魔します」


中に入り、まずは部屋に溜まっている瘴気を術で除去する。


「浄化せよ」


厳かに告げると、スーッと空気が軽くなった。


「ありがとな」


ベッドに起き上がっている陸がお礼を言う。


「ううん。いいよ」


ニコッと笑いかけて、ヤツがいるところまで近づいた。


陸は、なにやら会社での資料に目を通していたみたいで。

あたしが来ると、書類を隣に置いて、両手を広げてくれる。


「おいで」


フッと微笑まれて、迷わずベッドに上がって抱き着いた。

やった~!

ここ数日は、抱きしめてもらえなかったから、うれしい。

陸の体のことも心配だったけど、結構調子は良いみたい。

よかった~。


ヤツの首筋に顔をうずめて、スリスリとくっつく。


陸も、ポンポンと頭を撫でてくれて、抱き寄せてくれた。


「今日バイトは?」

「ないよ」

「そっか」

「うん」


のんびりとした会話をして、穏やかな時間を過ごす。

ちょっと色々と抱えているけど、この時だけは忘れていいよね?


「そういえば、蓮たち。明後日には退院だとさ」

「ホント?」

「あぁ、さっき電話が来た」

「よかったね。でも、まだ犯人は捕まってないんだっけ?」



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