地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
彼氏が、俺の友達だったから……付き合ったと?


「だからさ、深く考えないで楽しもうよ」


ニッコリと笑い、また俺の顔に手を添える。


ありえない。

こんな女。


顔を近づけてくる女の口に手を押し付けて塞ぎ、体を離した。


そのまま、空き教室を出て行こうとしたが、ふと足を止める。



そうだ―――。

ひとつ思いついた俺は、扉の入り口で立ち止まり……女に向かって問いかけた。


「ねえ、なんで俺なわけ?」


地を出した口調。


それでも聞きたくなった。

どうして、俺なのかと。


だが……。


女から返ってきた答えが、俺を変えることになる。










「だって陸くんとヤれたら、あたしの価値上がるじゃん? おまけに、滝本財閥の御曹司ってオイシイし♪」


「価値が上がる?」


「だって、こんなイケメン滅多にいないもの。付き合えたら、自慢になる。自分がかわいいんだって思える。だから、みんな告白してモノにしようとするのよ?」




『かっこいいから』、『家が財閥で金持ちだから』という理由。


まるで、身に着けて自分を着飾る装飾品のような扱い。


自慢になるから、ほしいってことか?

そんなことしか、俺のこと見てねえのか?


「そう」

女にはそれだけ告げて、空き教室を後にした。

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