地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
その日から、俺はコクられる度に聞くようになった。



『なあ、どこが好きなわけ?』と。



その質問の答えは、いつも同じだった。





『かっこいいところ』、『普通の男子とは違うところ』で。


そして、よく言われるのがこれで。


『お家が立派だから陸くんも立派なんでしょ?』




その言葉を聞く度に、女を信じられなくなっていく。


外見しか見ない。

家のことがついて回る。

体だけを求められることも多かった。



その理由は、『彼氏じゃ、満足しないから』や『ただ俺とシてみたいから』などの、そんなもの。



それが、堕落へ俺を引き寄せた一歩だった。








ある週末、ひとりで街にいたら。


「ねえひとり?」


年上の女に声をかけられた。


「は?」


怪訝な顔でそいつを見る。

派手な服装に、濃い化粧の女。

逆ナンか?


「かっこいいね、あたしと遊ばない?」


ニッコリと笑う女は、妖艶。



“かっこいい”と、またしても容姿に対してのほめ言葉。



それが、崩壊のスイッチだったと、今考えれば思う。

< 522 / 622 >

この作品をシェア

pagetop