地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
しかし、家には番犬がいた。


「陸!! アンタ、こんな時間まで何してたの!?」


吠える番犬は咲姉だ。



朝帰りすると、ガミガミ説教されるし、回し蹴りされっし。


散々だった。



そんな生活が続いて、中学3年になった時。


ひとりの女に出会う。


本屋でのことだった。



黒髪でみつ編み、きっちりと真面目に着こなした制服の女。



「秘密の十字架ないかなぁ~?」



一生懸命に文庫のタイトルを呟きながら探していて。



その文庫を見つけた俺は、


「ねぇ」


学校での王子様のように、完璧な仮面を張り付けて声をかけた。


本棚ばかりを見ていた女が、こちらを向く。



さぁ、ゲームの始まり。

まずは、顔を見て頬を染める。


そういうシナリオを頭の中で作っていたのだが。


女の反応は―――……。



「はい? なにか?」



キョトンとした表情で、俺を見上げている。

まー……前髪が長くて、あんまり顔は見えないんだけど。

少なくとも、今までの女たちとは違う反応。


「キミが探しているのって、この本かな?」


タイトルが見えるように、女に向かって差し出した。

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