地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
確かに、陸は以前。

風邪と過労で倒れた。


橘くんは……その時のことを言っているのか……。



「あ、うん。今は元気だよね、陸?」

「あぁ」


隣にいるヤツを見て、返事をするように促すと、一言陸が言った。


「そうなんだ。よかったね」


ニッコリとあたしたちに笑いかけて、ご飯を口に入れる橘くん。

その表情は、本当に陸が元気であることを嬉しがっているような感じ。

ウソはついていないみたい。


あたし、呪詛の犯人探しで……考えすぎになっているのかも。

ただの学部が一緒ってだけで、彼を犯人だと思い始めてた。


いかんいかん。

この人が陸を呪う必要がどこにあるのよ。



――フルフル

顔を横に振って、今まで考えていたことを頭から追い出した。


その後、昼食を済ませて、カフェテリアを出る。


橘くんは、あたし達よりも遅く食べ始めたから……まだテーブルにいた。

あたしたちは、そろそろ病院に行こうということで先に出てきたんだ。


「あーイライラした!」


開口1番に、零ちゃんがそんなことを言う。


「でも、今日はまだマシだったね」


この前の食事会に比べたら、彼の行動は大人しかった。

あたしがそう続けると、零ちゃんはため息を漏らす。


「まったく。私は、あの人苦手だわ。ずかずかと人のところに入って来るのが」


あ~確かに、そう言うところは、あたしも苦手だな。

彼女の意見に同意と言わんばかりに、コクコクト頷いて見せた。


「もうアイツの話はいいだろ。さっさと蓮たちのところに行こーぜ」


先ほどよりも、少しだけ機嫌が直った陸が、あたしたちを急かす。


「だね、行こう!」


零ちゃんと顔を見合わせて、そう返した。

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