地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
すると。


「そう緊張なさるな。ワシは、ただの爺じゃぞ?」


ニコッと杏のじいちゃんが、ふたりに微笑みかけた。



いや、ただの爺とかじゃないだろ。


全国の妖怪を取り締まる妖怪退治屋、神崎一族の当主で。


そして、日本経済界ではなくてはならない神崎ホールティングスのトップ。


あの杏が、『怖いんだからね!』と恐れる最強のじいちゃん。




絶対に、ただのじいさんではない。


この人に勝てる人っているんだろうか?




そう思って、首を横に傾げた瞬間。



「杏樹がいなくなった。何か……知っていることはないか?」



杏の親父さんが俺に問いかけてくる。




あのこと……ラブレターのことを知らないのだろうか?




「すいません。杏に毎日届いていた……」


お袋さんの方を見て、途中まで言った。



「え? まさか、あれ?」


彼女は、信じられないという顔をする。



この様子じゃ……アイツ、家族にはあんまり話してねーんだな。


< 560 / 622 >

この作品をシェア

pagetop