地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
だが。


「……考えられないことじゃないわ」


俺の呟きを聞いていた朝比奈が言った。


「え?」

「杏樹の近くにいる男を妬むのであれば……確かに、他の学生よりも親しい俺たちを狙う理由はある」


蓮が俺を見ながら続ける。


「でも、証拠はないわ」


安斎がため息交じりに呟いた。



そうなんだよな。

杏のストーカーが犯人だということは、今証明できない。

これは、あくまで……俺の想像だ。










杏からの電話もなく。


ストーカーからの連絡もない。


そいつの正体もわからないまま、時間だけが過ぎていく。


リビングの掛け時計は、午前10時になろうとしていた。


杏がいなくなってから、16時間が経っていた。



「ねぇ、もう捜索願を……」


お袋さんがそう言いかけた時。

――ピンポーン


家のインターホンが鳴る。


――ビクッ


全員が驚いて、体を揺らした。


「杏樹!?」


朝比奈がそう言ってソファーから立ち上がる。

< 572 / 622 >

この作品をシェア

pagetop