地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
いや、杏なら……インターホンは鳴らさない。

門や玄関に鍵をかけない神崎家には、出入りは自由だ。



それでも。

アイツが帰って来たと思いたくて……。


それは俺だけの願いではなく、全員一緒だった。



――パタパタッ


リビングにいるのがイヤで、全員で玄関へと向かう。


どうか、杏が帰ってきていますように。


心の中で手を合わせながら、走った。










しかしながら。


俺らの望みは、かなうことなく。


――ガチャ



「おはようございます。宅配便でーす」



玄関のドアを開けたのは、若い集配業者の男。



手に小さな白い箱を持っている。

大きさは、両手に乗るくらい。




「え? どうされたんですか?」


玄関に10人以上が駆けつけていたのを見て、男は目をパチクリとさせた。



「あ、いえっ……」


ヤツを見た瞬間に、落胆した表情を見せたお袋さんだが……すぐに笑顔で隠す。


「そうですか? えっと、神崎渉さんにお届け物ですね」


ニッと笑顔で言う男は、お袋さんにペンを渡した。

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