地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
「さっきはやめたけど……今からでもできるんだよねぇ~?」
ペロッと舌で、自分の口を舐める橘。
もう生理的に無理だと思った。
「~~~~!」
『近づかないで!』
上手く声は出せないけど、精一杯叫ぶ。
「だから~。何言ってるのかわからないって」
クククッと、握った手を口元にあてて笑った。
じゃあ、このガムテープはがしなさいよ!!
このキモ男がーーー!!
――ダンダン!
裸足の足で、床を叩く。
これだけしか抵抗できない自分が情けない。
本当に、泣きそうになる。
陸……。
助けてよ。
あたしここにいるから。
そう思って、自分の右手を見た。
小指にあるはずの、ピンキーリングを見た瞬間。
な、なんで?
目を見開く。
だって、陸からもらったピンキーリングがない。
あの赤いオパールが埋め込まれた……あたしのタカラモノが。