地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
「フーッ……」
息を深く吐き、ケータイの通話ボタンを押して、耳にあてる。
「もしもし?」
≪ケケケケッ……≫
変声機を使った声。
甲高い声が、スピーカーを使っているせいで、リビング中に響いた。
嫌いな声の部類だ。
思わず、ケータイを耳から離したくなる。
いや、刑事がこっちを見ているからできねーんだけど。
そんなことしたら怒鳴られそうだ。
「お前か、杏のストーカーは」
チラリと彼らの方を見ながら、電話の相手に問いかける。
≪滝本かぁ~?≫
間延びして、こちらをバカにしたような声。
「あぁ」
怒りを覚えつつも、我慢して話を続けた。
≪杏樹は帰って来ねぇぞぉ~永遠にな≫
「は?」
聞きたくもない言葉。
思わず、イラっとした声を出す。
――ブンブン!
刑事が、俺の目の前で両手を左右に振った。
怒ったような態度をするなという意味のようだ。
必死な顔に、そう書いてある。