地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
≪最後に、話をさせてやろう。杏樹、変なこと言ったら……さっき言ったこと実行するからね≫



傍に杏がいるのか、ストーカーはそう言った。


≪……あのバカに文句言うだけよ……≫

「杏!?」


わずかに聞こえた声に、リビングにいた全員が反応する。



杏か?

ちゃんと無事なのか?



そう思っていると。


≪あー陸?≫


電話の向こうから、今の今まで聞きたかった声がした。


「杏か? 無事なのか?」


思わずケータイを握る手に力が入る。


やっと声を聞けた。

俺は涙が出そうなくらい……うれしかったというのに。


≪バッかじゃないの? この閻魔大王!≫


愛しいはずの彼女から聞こえてきたのは、口の悪い言葉。


「え……?」

≪アンタがあたしをちゃんと家まで送ってくれないから、こんなことになったんでしょ!?≫


行方がわからなくなって、初めての電話。


さっき、ストーカーから『永遠に帰って来ない』と言われたのに。


ヤツの傍にいたのなら、あの言葉だって聞こえていたはず。


だが……彼女は、怒り爆発とでもいうように、俺に対して暴言を吐き続ける。

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