地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ふざけるんじゃないわよ。

もう、あたし……キレる。


「橘! 彼女を放しなさい!」


刑事さんらしいスーツを着た人が大声で叫ぶが、橘は応じない。



「杏樹? 言ったよね? 君は俺の腕の中で死ぬんだって」


耳元で囁かれて、背筋がぞっとした。



でも、あたしは……。


「言っとくけど。手と口が自由になったあたしは……怖いものないのよ?」


橘にしか聞こえない音量で返す。



「はぁ? そんなはったり……」


怪訝な顔をするヤツは、あたしの首にナイフを当てた。




その次の瞬間。



「あーちゃん! 見つけたよ!!」


あたしの癒しの声が聞こえる。



その声の主を探すと、彼女は……繭ちゃんは、あの黒い風呂敷の包みと、藁人形を両手に掲げた。



これなら、いける。




「本物の……陰陽師の術、見せてあげようか?」


「え?」



話しかけた瞬間、ポカンとして、あたしを見た橘。


その隙を逃さない。


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