地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ムリをし過ぎたから、こうなったのだとじいちゃんが言っていた。


あたしの“声”は、いつ出るのか、治るのかもわからない。


いくら治癒の術ができるじいちゃんでも、これだけはムリなことだった。




最初は、あたしの状態に、陸も家族も、友達もビックリしたんだけど……もう受け入れている。




だって、こうしてまた陸といられるから。



望んでいた穏やかな生活ができるから……あたしは幸せなんだよ?





代償が、まだ声でよかったって思ってるもん。






あのね、事件の犯人、橘だけど……。




ヤツは、命は助かったけど……色んなものを失った。





記憶も、視力も。


そして、歩くことも出来ない体になってしまった。





これは、呪詛の見返り。



あたしが返した時点で、ふたり分の呪詛を受けて……橘を待っていたのは死だった。



でも、それじゃ……意味がなかったの。


死んだら、すべてから逃げられる。



呪詛をやった責任も、人の命の重さもわからないままだった。



だから、彼を生かすようにしたんだ。

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