地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
杏に引っ張り出された自分の右手を見た。

……なんか……悲しいんだけど。


グーパーグーパーを繰り返して、悲しさを紛らわす。


「え? ホント? うんうん」


杏ちゃんは俺に背中を向けて通話中。

電話の相手は、朝比奈みたいだ。

聞こえて来た声でわかった。


「わかった。ありがとうね、零ちゃん」


話し終えたのか、杏が携帯を耳から離す。

そして、クルリと振り返って言った。


「りー。昼からの講義中止だって」

「なんで?」

「教授が体調不良なんだってさ。零ちゃんが教えてくれた」


マジ?

昼からヒマになったじゃん。


突然の講義中止の知らせに、このあとどうするかを考える。


しかし。

昼からの予定は、杏の一言で決まった。



「りー? 昼から時間あるなら、うちに来ない?」
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